納棺師だった知人が以前、このようなことを話してくれた。苦悶の表情を浮かべて末期を迎えたり、酷い事故で亡くなるといった厳しい状況の遺体と家族が対面してはショックを受けてしまう。遺族が納得できるような姿になんとしても整えなくてはならない。そうした必要に迫られることもままあったという。
整えるまでに時間がかかる困難な事例では、彼女の同僚たちは物理的な圧を加え、力技でなんとかしようとする人が多かった。けれども彼女は難しい状況であればあるほど、まず身体に触れるまでに時間をおいた。そして触れるのは最低限に抑えた。訳を尋ねるとこう答えた。
「亡くなった人の協力を得ないとご遺体を整えることはできないですよ」
死者は果たして感じていないのか?
葬儀までには数々の段取りがある。時間は限られているのだから物理的な介入によっ…