いつも通っているカフェでコーヒーを飲もうと席に向かうと、隣の女性が手で払う仕草をしていた。
ひらひらと揺れる手は一見すると「ここに座るな」を示しているようにも見えなくもないが、それほど強い意志も感じられない。だからつい「変な人だな」と怪訝に思い、隣に腰を下ろした。朝の時間帯はパソコンを開いて熱心に見入る人やヨガマットを傍に置いておしゃべりする人たちが多いからで、店内はある色調で整えられた雰囲気で満ちていた。
深く潜る
コーヒーを飲みつつ彼女をちらりと見ると、僕に向けてまた手をひらひらと翻す。次いで店に入りそうな人に向けて手を振る。安易であるが、彼女のことを「軽度の自閉症なのかもしれない」と思った。
けれども翻る手を「自閉症」で片付けることはおかしい、という気持ちがたちまち訪れる。
僕は目を瞑った。瞼の…